今回もアドバンスド講習の個別レポートをお送りします。
アドバンスド講習は、受講生ひとりひとりに対して個別にレポートを書いて提供します。
この個別レポートで振り返りができたり、次回走るときに再度思い出せたりするようになっています。
どうぞお楽しみください!
今回のレポートはK様。
車はコペンです。
なかなか見ない珍しいコペンだと思って調べると
「エクスプレイ」という外装バリエーションだそうです。お洒落ですね~!
サーキットはベタな車で走るのも良いですが、
少しマイノリティな車で走るのも注目を浴びて楽しいですね。
Kさんは今回初めてアドバンスド講習に来てくださったのですが、
前回開催時にFさんの隣にいらっしゃって、
少しだけFさんのアドバンスド講習を体験されました。
それで今回はご自身で受講して下さったという流れです。
ありがとうございます!
まずはカルテを記入頂いて、
Kさんの実力やご要望を確認します。
Kさんの自己評価は「中級者」。
美浜サーキットベストラップは
50.8秒と申告頂きました。
コペンのスペックも確認すると、
車重860kgで53馬力だそうです。
コペンのエンジンってwikiで調べると64馬力なんですが、このKさんのコペンは実測か何かで書かれているんでしょうかね。
タイヤはTOYOプロクセスR888の185/65R14を選ばれていました。
前後通しです。
Kさんは「このコペンでなんとか50秒を切りたい」という目標をお持ちだとか。
SHIFT UPはタイムがすべてではないと言っていますが、タイムを詰めたいんだ!というドライバーさん大好きですよ。(笑)
少しでもタイム短縮に役立ちたい!と考えてレッスン開始です。
①コースイン前レッスン
Kさんとまずはじっくり会話するところからスタートです。
「タイムは詰めたいが、
タイムを優先して走るとどうしても"雑"というか、、、
グッッとブレーキかけてガッッと曲がるような走りになって・・・。」
果たしてそれが、どのレベルであれば適切か?
というのが確認したいとのことです。なるほど。
確かにタイムを出そうと思ったらアグレッシブに攻めないといけないですよね。
しかしアグレッシブと雑はまた別物なので、
上達を目指すならば自分はどっちなのかと言うのを自覚していくべきです。
何て言うんでしょう、
速く走るって言うのは「雑に走る」とは真逆だと思うんですよね。
雑では速く走れない。
速い人っていうのは、操作が丁寧で精度が高いというのがまず土台にあり、
速く走るときは単純にその操作をテキパキとやるだけなんです。
決してドカンとかズドンじゃないんですよね。分かりますでしょうか?(笑)
テキパキとって言うのはつまり「遅れないように」ということです。
「勢い良く」ではないわけですね。
で、その丁寧な操作で攻めていくわけですが、
攻めっぷりに関しても適切でなければタイムは出ません。
攻めすぎてもダメだし、攻めなさ過ぎてもダメ。
例えば丁寧に操作して、「挙動が一切乱れません」と。
これは是か非かで言えば、難しいですが微妙に非だと思うんです。
攻め切れていないに近い。
限界走行の話を何度かしたことがあるのですが、
限界を100%としたときに、限界走行で狙うべきは98%、99%という足りない側ではなくて101%,102%といった微超過側なんです。
超過してくれないとそこが限界かどうかが判別できず、
ただ余らせているだけかもしれないですからね。
問題はその限界超過を「起こしている」のか「起っちゃっている」のか。
起こしているならコントロールですし、
起こっちゃっているならノーコンなわけですよ。
速く走るにはもちろん前者で行きたいですよね。
ここでKさんにはタイムアタッカー向けのメンタルレッスン。
アドバンスド講習のレポートでこれを書くのは初めてです。
「早めにヘルメットを被って車の中で待機するというのも、
実は結構大事なことです。」
「そうなんですね」
とKさん。そうなんです。
スポーツ全般何でもそうですが、
ドライビングもまた集中力を要するスポーツです。
枠ギリギリになって慌ただしく、、、
ドライバーの頭のコンディションを整えずにコースインしてしまうと
やはりいい結果は得られません。
走り方のイメージをきちんと組み立てて、
コースに入ってどう走るか、
どういう結果を出すかを想像する。
そして自分の気持ちのスイッチを入れる。
こういうこともサーキット走行を趣味として楽しむ上で、
ポイントなのだと知っておくと良いと思います。
こういうことをきちんとやっていくと、
「50秒を切りたい」
という一言にも重みが出るんですよね。
"なるほど、じゃあそのためにあなたは何をやったんですか"
という問いに答えられるような取り組み方をして、
その上で結果に一喜一憂する。
僕も結果を求めるときは"ルーティーン"をこなすんですよね。
ちなみにこの後、Kさんはコースイン直前に電話がかかってきてしまいました。
僕なら、結果を出そうという場面ではスマホは電波を切っておきます。
今日は和気あいあいと、「真剣ながらも楽しくレッスン」ですが、
Kさんご自身が真剣に「今からコースで50秒切るのだ!!」と気合を入れている場面では、
Kさんご自身のためにスマホは機内モードにしておくと良いと思います。
②実走レッスン
続いてコース内での実走レッスンの話に移ります。
Kさんとはコースイン前にこんな会話。
「最後尾に行った方が良いですか?
もう列の後ろについて良いですか?」
僕の答えはというと
「今並んでいる前の車が、自分の車より速いと分かっているならつきましょう。
逆に遅いと分かっているなら、追いついて詰まるリスクを考えたら離れていたほうが良いです。」
コースイン前からタイムアタックの戦略があるわけです。
コースイン後の最初の動きは決まっています。
ウォームアップして最初のアタックです。
ならば自分の前の車が自分よりも速い方が良い。
出来れば自分が先頭に並ぶと一番心配が少ないですよね。
そして自分の真後ろが自分よりも明らかに速い車だったりしたら、
ウォームアップ中にその車だけ上手にやり過ごして先に行ってもらうのも手です。
クリアラップ作りから戦略ですよね。
まずはKさんの普段の走りを見せて頂きます。
Kさんの走りはどんなレベルか?
タイムロスしているとしたらどこか?
Kさんの走りを初めて見るので僕も最初の数周に集中です。
運転操作を全体的にチェックします。
ひとまずコースインしてタイヤをウォームアップ。
ポイントはアタックラインからアウト側に外さないこと。
アタックラインの外側と言うのはタイヤカスが溜まっています。
後からつつかれて譲るときも、コーナーではなくストレートで譲ると良いですね。
#拾ったら試合終了です。
#計算して、ストレートで追いつかれるように調整できると凄腕
ウォームアップを終えて、いざアタック!
ぐるっと一周見させていただいた僕が目を付けたのは「ステアリング」でした。
あえて辛口に言えば、
「中級者」と自己評価するにはまだ一歩及ばない感じがします。
実はこれはKさんだけじゃなく、
自称中級者に多いんです。
ステアリングインフォメーションを全く受け取っていない人。(苦笑)
Kさんはこの日、「ステアリングインフォメーションを受け取ろうとする人」にステップアップしましたので無事にその集団から離脱するきっかけを得たわけですが、
この日の時点のKさんの走りを言葉で表すと、、、
「ただステアリングを切っているだけ」
なステアリング操作なんですよね。
ステアリングと言うのはコーナーリング中にドライバーが欲しい情報が入ってくる入り口なんですね。
フロントタイヤがどのくらい食っているか、
切り足したらもっと曲がるのか、もう限界か。
アクセルを踏む余地があるのか、ないのか。
そういった情報を得て、ドライバーはその情報を操作にフィードバックしていくんです。
しかしKさんのステアリング操作は
「ステアリングを大体このくらい切っておけば」でガバっと切り込み、
それで後は車に「よろしく」と言って待っているかのような操作です。
戻す時もタイヤとの相談はなく、「ハイ曲がった、次!」な感じです。
これだと、グリップを余すところなく使うことは出来ません。
「いやそんなつもりは・・・!」と思うかもしれませんが、
多分操作が直ったころに振り返るとご自身で笑い話に出来ると思います。
かくいう僕ですら、昔そうでした。
教わらなければ誰もが通る道なのでしょう。
ではその問題がある操作ってどんな操作?っていうと、
何度もステアリングを持ち替える、「手数の多いステアリング操作」です。
持ち替えるということはステアリングから手が離れるということです。
手が離れるということはその瞬間タイヤと掌との通信が途切れるわけです。
上級者は極力ステアリングから手を離しません。切り込むときに持ち替えません。
それはなぜかというと、ステアリングから入ってくる情報を使っているため、
手を離すことによってその情報が使えなくなることが困るからです。
極端に言えば、コーナリング中に目を塞がれるような感じ。
そういう感覚がもしまだ無いのだとすると、
ステアリングから入力されてくる情報が使えてないってことです。
さて、それでは"使える"ようにしていきますよ!
#夕暮れ時の写真は難しい!Kさんすみません(汗)
さて、限られた時間の中でいきなり「ステアリング」という大きいところを
変えて頂くというレッスンは初めてです。僕にとっても恐怖。(笑)
ステアリングっていきなり変えると混乱しますから、
本当は8月にやったFさんのように、コースイン前に操作をイメトレしておきたいんですよね。
しかし見ていてここをクリアしないとKさんのドライビングは頭打ちになってしまいますから、何とか直したいところです。
とりあえず、簡単なところからアプローチします。
「まずは、送り手を持ち替えないようにしてみてください」
ごちゃごちゃ言わず、これだけです。
操作には"幹"と"枝葉"があります。
幹の部分を直すと自然と好循環が出来るものです。
ステアリングの幹の部分は「送り手をなるべく持ち替えないこと」
そこに「手がクロスしてもOK」と補足し、
まずはこれでどうなるかを見ていきます。
予想通り(?)の混乱に、僕もKさんも思わず苦笑い。
しかしステアリング操作を変えることでKさんの操作に、
一つ問題点が浮かび上がってきました。
それはシフト操作のタイミングが遅いことでした。
減速して、ステアリング操作して、加速して・・・と走るわけですが、
Kさんはシフトダウンを旋回中にやっていたんですよね。
基本的に、コーナリング中に減速を続けることは無い(むしろ加速タイミングを見計らって構えているはず)ですから、
コーナリングに入る前にシフトダウンできるはずです。
今は旋回中にシフト操作をしているため、
僕が指摘した「ステアリングからの情報が~」と言う話以前に、
シフトに意識が持って行かれてステアリングへの意識がより薄れている状態だったのです。
なかなかショッキングだと思いますが、
長い目で見るとここに気づけたのは非常に大きいと思います。
#なんなら、僕も勉強になったくらいです
#当たり前だと思っていたことが違ったと気づくとなんか気持ち良い
そこからは反復練習。
ターンインまでにギヤを落とす、
ステアリングに集中して曲げる。
この繰り返しです。
分かっていても手が勝手にステアリングを持ち替えようとして、
僕が「持ち替えてはいけません」と突っ込む。
「あっ!難しいな~!!」
「なるほど、、、気づかずにやっとるっすね!!」
Kさん奮闘。(笑)
染み付いていますから、難しいでしょうね。
「中級者」と自称する人がステアリング操作を変えるのって、
大改造なんです。
正直、変えた直後は遅くなります。
でも習得後はおそらく跳ね上がります。
決め打ちでステアリングを切っていると
もっと切って良いのに切らない
切ってはいけないのに切る
こんな状態を一切気付かずにやっているんです。
それがなくなると思ったら、なんかワクワクしませんか?(笑)
「持ち替えない、持ち替えない」と唱えながら走行するKさんと、
それを応援する僕。
和気あいあいと楽しいレッスンです(笑)
「ステアリングを持ち替えない」がこの日のポイントですが、
大切なのはその目的を忘れないこと。
「持ち替えない」ことの目的は、
ステアリングからインフォメーションを得ることでした。
なので、ステアリングからの反力を感じるという練習を積んでいく必要もあります。
ここを忘れてしまうと「ただ持ち替えがないだけのステアリング」になってしまいます。
また、手数が減ることで切り返しで遅れないことも効果として出てきますから、
1ヘアからフェニックスにかけては
ステアリングを手際よく切り返して、フェニックスで曲がり遅れないようにしたいですね。
この辺を意識していくと、ラップタイムは今よりも断然詰まっていくと思います。
以上、実走レッスンでした。
③走行後のフィードバック
ステアリングをぶっつけ本番で大改造するという
走行を終えてパドックへ帰還。
コース内で伝えたことを落ち着いて整理したり、
追加で質問を頂いたりしました。
まずはステアリングという大テーマが見つかって良かったと思います。
ある意味、かなり大きい伸び代ですから即効性のある小手先のテクニックよりも収穫が大きいと思います。
Kさんは
「持ち替えているという認識はあったが、なかなか直すには至らず」
と振り返っていましたが、
染み付いた操作を直すというのは一度後退する行為ですから、
強制力をなにか働かせないと変わらないことが多いです。
今回はSHIFT UPのレッスンを受けたことで、
その"強制力"が"買えた"ということになります。
レッスンを受ける効果ですよね。
もう一つここで振り返るのですが、
実走レッスン中に最終コーナーで「持ち替えないと曲がり切れない 」
という状況が出来ました。
その時は曲げ始めが遅いと指摘したのですが、
もう一つ原因があって、それはドライビングポジションでした。
ドライビングポジションが適切でなかったために、
ステアリングを持ち替えない場合に大きく舵角を当てにくい姿勢になっていたのです。
適正なポジションは、シートから肩が浮かない状態のまま、
ステアリングの頂点に手首を乗せられるくらい。
そうなるようにシート位置や背もたれの角度、
チルト、(あればテレスコも)で調整します。
車によってはシートポジションの制約があるので、
そうなったら少しだけ基本形から変えてみる。
これが出来ていなかったため、
ステアリングを持ち替えずに切り込んでいくと、
肘が伸び切ってしまってステアリングが切れない
という状況を作っていたのでした。
#その結果、自然と「持ち替えちゃおう」に向かったわけですね
シートポジションを少し変えると持ち替えなしで大きくステアリングを切ることが出来るようになりました。
「まずはこれを1000回くらい練習して、
次また見てもらいたい」
とKさん。練習熱心で素敵ですね。
他は箇条書きで振り返っておきます。
・ステアリングを握る指で、力を入れるのは薬指と小指。
・手の甲を自分に向ける。
・保持する位置は持ち替えずに切れる舵角が大きくなるため9:15の位置がオススメ。
・この基本形で舵角が足りないときに初めて持ち替える。
持ち替えるときの手の型も基本がある。
・持ち替える場合でも、一回の持ち替えで元の位置に戻れるように(手が迷子にならないように)持ち替える。
・手つきがおかしいとカウンターステアも精度が下がる。
手が迷子になるためステアリングを手放して運任せ。それだと危険。
確実にステアリングを支配下に置く。
一瞬でニュートラル位置に戻せるように自分の中で保証。
#緊急時にタイヤがどこを向いているかが分からなくなるステアリングは未熟。
・1ヘアからフェニックスへの切り返しでは、
ステアリングを真っすぐにして待つ時間はない。
僅かに左に舵を当てて"たわみ"をとっておき、そこから切り増してアプローチ。
・フェニックスでアンダーを消すのが大変なのはまずは切り遅れて車が外を向いているから。
曲げ遅れなければ(=最初に乗せるべきラインに乗せられていれば)もっと楽に曲がることが出来るはず。
・加速直前にギヤを落とすから流れが悪い。
ステアリング開始前にギヤを落としておいて、
旋回中は旋回集中。加速操作にスムーズにつなげる。
・シフトしないほうが車速が落ちるのはクラッチを切らない分エンジンブレーキが効いているから。
減速を終えてからシフトダウンする場合にそのメリットはあるのかもしれないが、僕はステアリング操作に集中するほうを重視すべきに思う。
#車が最も不安定であるはずの旋回中にクラッチを解放・係合する
(=タイヤの負荷を変動させる)ことにも運転の思想として違和感を感じる。
・↑でブレーキが間に合わないのであればそれは突っ込み過ぎである。
こんな内容を、走行枠終了後10分程度+αで行いました。
ステアリングの練習はサーキットぶっつけよりも日々の運転が一番身に付きます。
一般道で基本形を練習してみて下さい。
この日のタイムの推移は
1枠目 51"909
2枠目 51"254
3枠目 -(逆走枠 お休み)
4枠目 51"655
5枠目 52.597(レッスン)
と言う感じ。
この日は最終枠で即効性は見られませんでしたが、
今回の内容に沿って繰り返しトライしていくと
まず運転する手応え、楽しさが変わってきます。
助手席の重さ、タイヤのピックアップ、ステアリング操作の大改造で
直前の枠とその相対比較で一旦約1秒タイムが落ちましたが、
ここから1.2~1.3秒は確実に速くなりますので安心して下さい。
車がきちんと自分の支配下に置けている感触がコーナリングごとに感じられ、
今までのドライビングって何だったんだろうと思う日がやってきます。
楽しみながら、頑張ってくださいね!
レポートは以上です!
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