前回に引き続き、アドバンスド講習の個別レポートをお送りします。
アドバンスド講習は、受講生ひとりひとりに対して個別にレポートを書いて提供します。
この個別レポートで振り返りができたり、次回走るときに再度思い出せたりするようになっています。
どうぞお楽しみください!
今回のレポートはI様。5/22に続くリピート受講です。ありがとうございます!
Iさんの車はこのロードスターRFですが、
今回はアドバンスドBの受講をご希望頂きました。
アドバンスド講習にはアドバンスドAというコースとアドバンスドBと言うコースがあり、「アドバンスドB」とはどんなコースかというと、
受講者さんがご自身の愛車を運転する方式ではなく、
講師の僕が、僕の愛車でデモンストレーション走行を行い、助手席で体感いただくというものです。
このアドバンスドBへの僕の拘りは、
丁寧に、落ち着いたペースで一つ一つ解説しながらの走行というコンセプト。
僕も2名の現役レーサーのドライビングに助手席同乗したことがあるんですが、
「プロってやっぱり凄い!自由自在だ!!」と、思わずファンになってしまうような感動はするものの、そこに手厚い解説はありません。
#勝手に見て勝手に技を盗むしかない
僕がその時体験させていただいたのがレッスンではなく、
「皆さんの車、プロが本領を引き出して走ります」的なアトラクション的な位置づけだったり、
「お手本走行見せます」という位置づけだったのでそういうものと言えばそういうものですが、
「見て盗む」も体験する側に技術が必要です。
SHIFT UPのレッスンは「凄い!凄すぎる!!」みたいに思って頂くよりも
受講生が持ち帰って真似できることを一つでも多く見つけてもらうことが大切です。
「あれを真似しよう!」、「これを自分の運転に取り込もう!」というネタを獲得して欲しい。
僕のスキルは誰にも真似できないような天性の物ではなくて、
思考の中身とポイントを抑えて学べば誰でも真似ができます。
幼少期から毎日のようにレーシングカートに乗って・・・とかそんな生い立ちもありません。
多くの「趣味でサーキットを走っている人」と一緒です。
なので、"天才的な走り"よりも一見の価値があると思います。
ちなみに"速い走り"を見せようと思うと、
どうしてもそのためには強烈にグリップするタイヤが必要になるという事情もあるんです。
僕は一応教習車であるマークXで美浜サーキット45秒台までは
出した実績があるのですが、その前提はBS POTENZA RE-71RS装着。
グリップするタイヤって走れば走るほどタイヤカスを拾って、挙動が崩れていってしまうので
こういったレッスンには向かないんですよね。
「さっきと同じように走って!」と言われても、出来ない。
タイヤがもう"さっき"とは違うので。
それじゃ何を教わっているのか分からないということで、
ロングランでも挙動が狂ってこないミシュランのPS4Sを履いて、
それなりのラップタイムの中でレッスンを行うというコンセプトなんですよね。
アドバンスドBでもアドバンスド講習カルテを記入していただきます。
Iさんの自己評価は「初心者+」。
美浜サーキットベストラップは51.3秒と申告頂きました。
レッスンの希望テーマは「ライン」と「ブレーキング」でした。
アドバンスドBはご自身の走行枠に拘らず、
どこでも受講可能です。
この日Iさんはご自身はクラス3で走行されており、
クラス1の走行枠を使ってレッスンを受講されました。
アドバンスドBの教習車はこのマークX。
このマークXは見た目は普通ですが、
実はHotVersionの企画に抜擢されたことのあるチューンドカー。
ドライバーの操作に対して非常に素直で懐の深い挙動を返す、
抜群に仕上がった車です。
実はこのクルマを教習車として走らせるのは12月か、
延長したとしても1月のスパイシー走行会までにする予定。
レッスンの趣旨とは少しずれますが、
良い挙動のクルマってどんな風に走ってくれるの?というのを見るにはこれ以上の車は無いですから、
興味のある方は是非12月までにアドバンスドBをご受講ください。
①コースイン前レッスン
通常はコースイン前に10分程度のレッスンを行うのですが、
この日はわけあって短めに。
そのわけとは、、、
この日から正式に提供開始したばかりのアドバンスドB、
Iさんとはぐれました(苦笑)
ご自身の走行枠の直後にレッスンを入れていたためインターバルが短く、
Iさんはコース横で休憩されていました。
いや~、、、走った直後は思わず一息つきたくなりますよね。
時間内に見つかって良かったです。(笑)
ちょっとドタバタしましたが、
カルテの内容に沿ってレッスンを行います。
ひとまず乗車して頂きます。
教習車は運転操作の観察に集中して試乗していただくために、
助手席にも4点式のシートベルトを装着しています。
#バケットシートを載せることは予算事情で出来ませんが、
#これがあるだけでも結構違うものです。
「突っ込み過ぎなのか、全然アクセルが開けられなくて
どうやってアクセルを開けていくのかが楽しみ」
というIさんのコメントを確認し、コースインです。
②実走レッスン
コース内での実走レッスンの話に移ります。
コースに入ったらまずはウォームアップ。
レッスンでもいきなり全開にしたりはしません。
コースインから全開走行に入るまでのプロセスも一つの見どころです。
まずはウォームアップ。
ウォームアップはタイヤを縦方向に使います。
タイヤを縦方向に積極的に使って温めますが、
ムリに負荷をかけるのではなくて、優しく、でもきちんと負荷をかけます。
ウォームアップが済んだらレッスンの本題に。
まずは丁寧に各コーナーのイン、アウトを使って走っていきます。
特にフェニックスコーナーでインを締めることは立ち上がりでアクセルを開けやすくするために重要です。
ブレーキは無理に飛び込まず、きちんと止まり切れるところから確実に制動。
「ブレーキでは突っ込み過ぎず、立ち上がりで頑張る」
という考え方を実践していきます。
ブレーキで頑張りすぎていないから、立ち上がりで頑張れるとも言えますね。
スローイン、ファストアウトです。
「どうやってアクセルを開けていくのか」に対しては、
進入できちんと車速を落として、旋回は旋回に集中してきちんと向きを変え、
結果立ち上がりで早くアクセルを踏める
という循環を作ることが大事、というのが答えですね。
立ち上がりのポイントを解説すると、
「アクセルでアウトに寄せていく」という意識です。
初心者の方だと「アウトインアウト」と言うと、
アウトから進入し、インを通り、アウトに立ち上がるという
単なるライン取りの話に思ってしまうものですが、
アウトに立ち上がる場合の走行ラインは「アクセルを限界まで踏んだ結果」と考えます。
ステアリングを何となく緩めてアウトに向けてラインを選ぶのではなく、
アクセルを早く、深く踏んだらもうそこしか通るラインがない!
というのがアウトへの立ち上がり方です。
ステアリング目線で語ると、「ラインに乗せる為に戻す」のではなくて、
「アクセルを踏むためにステアリングを戻す」
「アクセルを踏んだ分だけ、ステアリングが勝手に戻ってしまう」
こんなイメージで立ち上がっていきます。
ただし、アクセルを開けることを焦っては逆効果。
向きが変わっていないのにアクセルを無理やり踏んでも
どんどん壁が迫ってくるような感覚となり、
そうなると「ステアリング戻したらコースから飛び出ちゃうんですけど…?」
という感覚に陥ります。
車を進めたい方向と、実際に車が向いている方向のギャップを意識してアクセルを踏んでいくことが大事ですね。
Iさんの愛車のロードスターRFは、
教習車のマークXとは重さもパワーも違うと言えど、
後輪駆動、特にFRという意味では似た走らせ方が出来ると運転が痛快になります。
リヤを僅かに弱スリップさせながら、
車を前に前に押し出していくように走れると良いと思います。
ここでIさんのコメントですが、
「なるほど~!」と頷きつつ、
「自分はやれてるのかな~・・・?
ケツ(リヤ)がめちゃくちゃ出ちゃうんですよ」
ブレーキが残りすぎ?ハンドルが戻ってない?
色々と考えを巡らせるIさん。
基本的にリヤが流れるというのは、リヤタイヤが限界を超えているということなので、
負荷を落とすか限界を上げるといった対処が必要です。
負荷を落とすには、やはり突っ込み過ぎ(オーバースピード)が悪循環のもとですから、
スローインファストアウトしようという話に戻ってきます。
コーナリングは「速く曲がれていればいい」と思いがちですが、
コーナリングはその次の動作である加速と密接に関係していますから、
コーナリング終わりでアクセルを踏み込んでいける状態で曲がっていかないと「旋回が速いだけ」になってしまうんですよね。
#入り口側で頑張りすぎて、出口に向けて失速していく走り方は△
限界を上げる方法はリヤの車高をフロントに対して下げるとか、
トレッドを広げるなどと言った方法があります。
また教習車は機械式LSDでスライドを押さえているため、
そういう差もあるでしょうね。
タイムアタックラインもご紹介。
アタックする時は最終コーナーの進入をとにかく広く使います。
コントロールラインを通過してからではなく、
そこに向かう時点からアタック始まっているという風に考えていくと、
ここは必然的にこういうラインになってきます。
タイトに曲がるよりも、Rを大きくとったほうがボトムスピードが落ちない
などの特性が車にあれば、赤ラインよりも少しRを大きくとって、
イン側の縁石に触れずに立ち上がるのもアリかもしれませんね。
その後の1コーナーは車速が乗った分、
ブレーキングのポイントはわずかに手前に来るはずですから
ここもまた突っ込み過ぎないように意識します。
もはや、「突っ込み過ぎるな」しか言っていませんね(笑)
ここで「突っ込み過ぎ」について少し補足しておくと、
突っ込み過ぎは「過ぎ」が敵であるということを忘れてはいけません。
「突っ込み過ぎない」と「突っ込まない」は違うのです。
ドライビングの最適追求とは「最適タイミング」の追求であり、
行きすぎても行かなさ過ぎてもどちらもダメなのです。
どちらの方がダメかと言うと、実は「行かなさすぎる」ほうが良くないと僕は思います。
「突っ込み過ぎ」と言われたら、少しだけタイミングを早める。
「少しだけ」が結果を出すポイントです。
そろそろレッスン時間も終わるかと言うところでワンポイント。
「ライン取り」に関しては、正しいライン、推奨ラインが走れればそれでOKかと言うと、それでは「美浜サーキットが上手なドライバー」にしかなりません。
仮にタイムロスがあるにしても、
自分が"こう走りたい"という走行ラインを
自分の意志に合わせて自在に走れることも重要です。
そしてその走りを実現するために、
車の仕様を自分の好みに合わせていくことも必要ですね。
もし機械式LSDを入れるのでしたら、相談に乗りますよ!
機械式LSDは「つければ良くなる」という簡単なものではなく、
セッティングの巧拙で、楽しく走れるパーツになることも有れば、
人馬一体感の真逆に向かって行ってしまう神経質なパーツになることもあるんです。
そういう意味ではトルセンLSDは無難なのですが、
FRらしい走り味を手にしようと思えば機械式LSDは手を出したいパーツですよね。
以上、色々な体験をしていただいた実走レッスンでした。
③走行後の解説・質疑応答
色々と考えを巡らせながらデモ走行を楽しまれたIさん。
まずはご自身のロードスターRFの車高バランスに意識が向いたご様子です。
「今、車高がリヤ上がりっぽくなっていて、
下げたほうが落ち着くかな・・・」
車高バランスは他との兼ね合いもあるため、何とも言えないのですが
フロントがきちんと食ってくれる範囲であれば、リヤ下がりにしておいた方がリヤのキャパシティが上がり、立ち上がりは楽になりますよね。
「今日の感じでは、ド・オーバーステアなんです」
というIさんの感触であれば、下げてみるとバランスが取れそうですね。
また、きちんとした品質の物を選び、正しく使う前提ですが
スペーサ―でリヤのトレッドを広げるという方法もお手軽かつ、結構効くのでアリだと思います。
#ロングハブボルトを使用、スペーサーは複数枚重ねない
僕は色んなサーキットを走るときに現地で特性を簡単に変えられるように、
ホイール選びの時点で少しインセットの大きいホイールを選び、
スペーサを何種類か持っておいて、ホイールを外に出したり引っ込めたりすることでアジャストできるようにしています。
#前後でそれぞれ3mm, 5mm, 7mmと持っておけば結構幅が出来ます。
こんな感じでレッスンが終了。
この日のIさんのラップタイムは
1枠目 52"161
2枠目 53"538
==ここでレッスン実施==
3枠目 逆走お休み
4枠目 52”062
5枠目 52"233
今回はタイヤが"お疲れな感じ"だったので、
なかなか納得の走りをすることも難しかったかもしれませんが、
暑くなってきて、路面も汚れてきてあまり良くないはずの4枠目で
ベストラップが出ているのが一つ注目点かもしれませんね。
何か心当たりはありますでしょうか?
ちなみにIさんの走行を1枠目で見ていたのですが、
チェッカー後のスロー走行でもきちんと走行ラインを確かめるように走られていたのが良いなと思いました。
ただアタック中はまだこんな感じになってしまうご様子ですから、
気合が入った状態のときにいかに精度良く車を走らせられるか?
と言うところが壁を乗り越えるポイントかもしれませんね。
ちなみにここでインに付き遅れる理由の多くはステアリングの切り遅れです。
次回以降、またレッスンに遊びに来ていただけるのであれば、
「ステアリング操作の遅れ解消」をテーマにすると
ドライビングがもっと楽しくなるのではないかと僕は思っています。
5月のレポートも、
今読み返してみると「そうだった!」と思い出される部分があるかもしれませんから、また改めて開いて見ると良いと思います。
Iさん、またのレッスン受講をお待ちしています!
レポートは以上です!

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