今回から6回にわたり、アドバンスド講習の個別レポートをお送りします。
アドバンスド講習は、受講生ひとりひとりに対して個別にレポートを書いて提供します。
この個別レポートで振り返りができたり、次回走るときに再度思い出せたりするようになっています。
どうぞお楽しみください!
まずはお一人目。ヴィッツGRのT様。
車重1060kgの1.5L 106ps、MT車。駆動方式はFF。
見た目はザ・エントリー車でしたが中にはロールケージが通っており、
4点式のシートベルトもついた極上エントリー車でした。
タイヤは前後にDIREZZA DZ101を装着されていました。
Tさんは自動車部に入っているとのことで、
免許も8/19に取ったばかりの超がつく初心者さんでした。
その状態でサーキットを走りに来るとは、凄い!(笑)
アドバンスド講習はこんなカルテをご用意しています。
これを書いていただくことで、
申し込み時点で受講生の実力や、今日、何を習得したいのかが見えてきたり、
最低限の確認やお約束の取り交わしが出来る仕組みです。
Tさんはこの日が初めてのサーキット走行で、
運転免許を取ったのもまだ最近だそうです。
レッスンの希望テーマは「おまかせ」ということで、
正真正銘のルーキーなTさんに対して
"SHIFT UP流の初走行レッスン"を行いました。
Tさんはこの後レポートをお届けするHさんやIさんのグループで、
サーキット初走行でレッスンを受けて下さったのはお仲間の推薦です。
Tさん自身は「上手くなりたい!!」というよりは、
「まだ何も分からないんですけど…」という雰囲気だったので、
とにかく「安全に走れること」、「周りをよく見て走れるようになること」をテーマにすることにしました。
そこが出来ていないとサーキットは怖くて危険ですからね。
①コースイン前レッスン
コースイン前レッスンでは、まずは車両点検から。
サーキット走行はコースイン前から手順があります。
それは「車が安全に、トラブルなく走れる状態かどうかをドライバー自身で確かめること」。
最初にエンジンルームのチェックを一緒にやりました。
慣れてくると横着して省くようになりますが、
コースに出て何かが起こって赤旗を出したりしがちです。(苦笑)
初心者も上級者も同じですが、
ルーティンワークと言うのはワーク自体にもメンタル的にも結果を良好にする効果がありますから、
こういうのは結構ちゃんとやったほうが良いんです。
というわけでエンジンルームの点検。
時間も限られているのでざっくりと済ませてしまいましたが、
本当は右側から順番にやっていくなど、抜け漏れしないように順序を決めていくと良いです。
例えばこのエンジンルームなら、バッテリーから時計回りに行くなど。
#バッテリー端子緩み
#ヒューズボックスふた緩み
#エアクリボックスふた緩み
#ラジエターキャップ緩み
#ラジエターリザーバタンクふた緩み
#オイルレベルゲージ油量&ゲージ差し込み確認
#オイルフィラーキャップ緩み
#ウォッシャータンクふた緩み
#ブレーキフルードふた緩み、滲み、液量
こんな感じですかね。
点検していくと、エアクリーナボックスのクリップが外れていました。
トラブルを起こす前にこういう不備が見つかるとラッキーですよね。
見つけたのはTさんご自身。
「きちんと自分で見なきゃ!」という意識がないと、ただはいはいと頷くだけになりがちですが、
この姿勢は良いなぁと感じました。
一通り点検したら装備品を身に付けて車に乗り込みます。
乗り込んだらまずドライビングポジションをきちんと合わせます。
肩をしっかりとシートバックに着けた状態でステアリングに手を伸ばし、
手首でステアリングの頂点に触れられるくらいが基準です。
その状態をベースに、
・ペダル操作がしやすいか?
・ステアリングを切った時に窮屈にならないか?
を確認して微調整します。
本当は正しいステアリング操作が出来ているかどうかでも
ドライビングポジションの良否の感じ方が変わってくるため、
ステアリング操作を正しく学んだ後に再度見直すと良いですよ。
ポジションが決まったらシートベルトを締めます。
4点式や6点式であれば、もう"ガチガチ"に締めます。
体が動くようだと、事故したときにベルトに体が潜り込んでしまいます。
少しキツいと感じるくらいに締めましょう。
気になったのはグローブ。
サーキット走行は「長袖長ズボン」と規定されていますが、
その意味は「肌を露出しないこと」
あってはいけませんが横転したり、横からの飛び石でガラスが割れたりしたときに肌を露出しているとガラスで怪我をするリスクが増します。
グローブはただステアリングを滑りにくくするというだけでなく、
袖まで長く伸びたタイプを選ぶことで保護具としての意味も持っています。
お節介ですが、サーキットを走っていればいずれ欲しいと思うようになるので、どうせならきちんとしたものを買いましょう。
とにかく安く済ませたい!のであれば
例えばこの辺りが良いのではないかと思います。
(グローブは"サイズ"があるので気を付けて!)
#大勢のTさんのお仲間の皆さん、出資してあげてください!
#Tさんに恩を売っておきましょう(笑)
②実走レッスン
準備が出来たところで、緊張の初コースインです。
僕が送った言葉は
「遅くても全然良いので、
後ろや横をよく見て、
"上手に譲る"ところからやりましょう」
初めて走っていきなり速いということはまずありません。
早く上手くなるには、コース上での余裕を身に付けるところからだと思います。
余裕を身に付けるには、後ろに車が来た時にどう対処すればいいかを知ることからですね。
テクニック的な難しいアドバイスはもっと先の話。
まずはとにかく周りをよく見る。これだけです。
コースインはホワイトラインをきちんと守ることもとても大切なことです。
野球選手が「グラウンドは聖地」と言ったりしますが、
モータースポーツのドライバーにとって、トラック(コース)は聖地。
レギュレーションをきちんと守りながら入場しましょう。
Tさんは僕のしつこい誘導(笑)で、
まずは入場をきちんと行うことが出来ました。
コースインすると早速後ろから車が迫ってきます。
サーキットの"フリー走行"はレースではありませんから、
抜かれないように塞ぐということはせず、
むしろお互いが気持ち良く走れるように安全に譲り合いを行います。
そんな場面でやるべきことは
「自分はこっちに避けるよ!」と後ろの車に自分の意志を示し、
安全に追い抜いてもらうこと。
コース上で進路を譲るときには、
初心者側は余計なことはしないのが安全です。
上手なドライバーならウインカーを出せば安全に抜いて行ってくれますから、
ウインカーを出して自分は進路を変えずにやり過ごします。
ペースを上げながら、気を付けたいポイントを解説していきます。
まず2つ。
・ブレーキングする時にバックミラーで後方を確認すること。
・コーナーでIN側に切り込むときに、IN側に車が居ないか?飛び込んでこないかを確認すること。
これから車を向かわせる方向をきちんと確認して、
それから操作をするわけですね。
#これは一般道でも同じことだと思います。
操作に慣れてきたことを確認しながら、
少しずつブレーキのタイミングやステアリングを切り込むタイミングを指示していきます。
最初はとにかく雰囲気を掴むことと、楽しむことが大事です。
ある程度経験のある人に向けたレッスンとはまた違う雰囲気です。
#自分にもこんな頃があったなぁ
さらに、アクセルを全開にしてみたり、ブレーキ踏力を上げてみたりと出来ることを増やしていきます。
ここはきちんと出来たかどうかを確認するよりも、
躊躇しがちな入門ドライバーに「やっても大丈夫」と許可を出していくことで
安心してトライできる。
だからとにかくやってみましょうと言うことが目的です。
アクセル全開もフルブレーキングも最初は怖いですからね。
一度やってみれば怖さは一気に薄れますし、
そこからは自力で回数を増せば慣れていきますからね。
ちなみにブレーキはどこからブレーキを踏んだらどこまでに減速を終えることが出来たのかを毎回きちんと覚えておき、
少しずつ最適なブレーキングポイントに近づけていくことが大切です。
なので、ブレーキングを開始する地点を強く意識すると良いですね。
色々なことを試しながら、
初走行でまだまだ走行ペースを上げるに至らないTさんは
追いつかれては譲り、追いつかれては譲りを反復。
「後ろに車はいますか?」と聞いたりして、判断をTさんに委ねます。
すぐに慣れてきて、自分の判断で後続車に譲れるようになりました。
まずまず、周りをよく見ることができていると思います。
ただ一つアドバイスがあるとすれば、
そこまで白旗降参的に譲らなくても大丈夫ということです。
譲ってばかりでは面白くないですし、
自分自身の実力も良く分からないまま走行が終わってしまいます。
アタックしたいときは「1周だけ」などリミットを決めて、
自分の走りに集中しても大丈夫だということもアドバイスしました。
"譲る"というと「追いつかれた側が譲る」と考えがちですが、
走行会は速い人が偉い人ではありません。
追いついてしまった側が自分よりも遅いドライバーに対して少し待ってあげる、プレッシャーをかけないというのも同じ譲り合いですよね。
#美浜サーキットは1周が1分に満たないショートコース。
#上手いドライバーならきちんと距離をはかってアタックに入れば、
前の車が急にペースダウンしたりしない限り運要素は殆どありませんよね。
クーリング中・ウォームアップ中のように、
「今はペースを落として走っています」という時だけは、
ラインを塞がずに追いつかれた側が譲るべきですけどね。
#コースはアタックしている車優先です
余談で別のサーキットでの話を書いておくと、
鈴鹿サーキットや富士スピードウェイと言った国際サーキットはちょっと常識が違います。
一周が長い国際サーキットでは、
遅い車が進路を塞いでいるとその時間は結構長くなります。
よって国際サーキットでは暗黙の了解的に、追いつかれたら譲るという風潮がありますね。
上手い人だと追いつかれるなと悟ったらアタックの邪魔をしないように計算して進路を譲ります。
そうして他の車に良くしていると、その車がクーリング走行しているときなどは逆に進路を上手に譲ってもらえたりして、
そういうコミュニケーションが無言で行えると結構気持ち良かったりしますね。
あっという間に初走行の時間は終わり、
チェッカーが振られました。
ピットに戻るときはBSEの立ち上がりからアウト側をキープでピットに戻ります。
ずっとハイスピードで走って感覚が麻痺してしまいがちですが、
ピットは安全のため、徐行ですね。
③走行後のフィードバック
走行時間はあっと言う間に終わり、パドックへ帰還。
ここではコース内で伝えたことを落ち着いて整理したり、
追加で質問を頂いたりしました。
「どうでしたか?」と問うと、「全然まだ分かってない」と苦笑いのTさん。
ひとまず"追いつかれたときに譲る方法は身に付いた"とのこと。
やっぱり安全に譲るということが出来るとそれでまずは"怖くなくなる"ため、
そこをクリアできれば次の走行枠とか、その次とかで余裕が出てくるとだんだん攻めていけます。
まずは初走行を事故なく走ることが出来て、
きちんと自分の判断で譲るというアクションを取れるようになったことで
一歩目を順調に踏み出せたのではないかと感じました。
僕がTさんの運転を見ていて良かったと思うのは、
操作が丁寧にできていたこと。
ペースが遅いのはあったかもしれませんが、
車を"振り回す"ではなく"走らせる"と表現できるような運転でした。
慣れてくるとまず荒っぽくなって行きがちですから、
荒くしていくのではなくて、研ぎ澄ましていくという感覚でレベルアップを図っていけると良いなと思います。
走り終わった後はボンネットを開けて、溜まった熱を逃がしておきましょう。
走ると水温、油温が上がります。
走行会など連続して走り続ける場合はインターバルできちんと冷やすことが大事です。
車から降りるとお仲間が大勢集まってきて、皆から声をかけられるTさん。
皆、サーキット趣味に足を踏み入れてくれる若者が大好きで「来てくれてありがとう!!」と言う感じで嬉しくて仕方ないんでしょうね。
今はまだおっかなびっくりと乗っているTさんも慣れてくると必ずヤンチャな運転をするようになっていきます。
良くグリップするタイヤも欲しくなるでしょう。
#誰もが一度は通る道
そうなると車高の高い車は「横転する」という事故パターンがあるので、
高い縁石に注意するとか、万が一内輪が浮いてしまった場合はどうすればいいかとか、
今のうちに対処方法を学んでおくと良いと思います。
こんな感じで講習が終了。
1枠目のラップタイムは1'03"882でした。
2枠目はやはり慣れてきて、1'00"389まで短縮していました。
逆走の3枠目は走行せず。
ここでは2枠目を走ってライン取りについて知りたくなったTさんへライン取りの補習を実施しました。
#うっかり走りそびれたともいうかもしれません(汗)
#逆走はレイアウト上、安全マージンが全然ないのである意味良かった(?)
4枠目は58"218と一気にタイムアップ。
最終の5枠目は57"424まで詰まりました。
ライン取りを考えるだけでまた一段と詰まることが分かりますよね。
SHIFT UPの講習はラップタイムの短縮を目指したものではないですが、
上達の結果としてラップタイムに現れてくるのは良いことです。
ライン取りでタイムが詰まるというのはつまり、走りの無駄を削いだということ。
とにかく無駄を削いで削いで、限界まで研ぎ澄ましていくとその車で出せるベストラップになります。
そのベストラップが出せるドライバーが"上手い"ドライバーですね。
この後投稿していく他の方のSHIFT UPカルテも上手くなっていくヒントが満載ですから、積極的に読んでみてください。
この日はフレッシュなTさんへのレッスンで、僕も初心を思い出すことが出来ました。
初心者さんとの交流って良いですね。
Tさんはまだ免許を取って間もないということで、伸びしろがめちゃくちゃあると思います。
普段の運転からスムーズで正確な操作の習得に心がけて、
一通りの運転操作に慣れてきたらまたぜひレッスンへ遊びに来てください。
次回は今回よりも上手くなったTさんに提供すべきメニューでレッスンしますので、今回よりも確実に楽しいです。(笑)
お待ちしています!

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